さり海馬

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SR5:戦術:リガーとデッカーとパーティ設計

Tactics: Riggers, Deckers, and Party Design | Running the Shadows の翻訳記事です。原文は←のリンクからどうぞ。

戦術:リガーとデッカーとパーティ設計

僕は車大好き人間だ。シャドウランのヴィークルも大好き。だから 3rd Edition や 4th Edition で、ほとんどのチームがリガーを NPC にしてたのは辛かった。ゲームのメカニズムや流れの観点から厳密に考えてみると、リガーを PC にするのは割に合わない。そのプレイヤーがヴィークルに資金や作成点のほとんどをつぎ込んでしまったのなら、そのヴィークルを離れる理由がなくなってしまう。つまり、そのプレイヤーはランから外れて、チームが脱出のための足を必要とするときまで、ずっとひとりで座っていることになる。控えめに言っても、これは楽しくなかった。この傾向は4th でさらに固まったが、偵察や戦闘の役割までドローンが担うようになってしまったため、これまでそういう仕事をしていたプレイヤーたちも、何もせずに待っていることになってしまった。しまいには、GMたちも、その他のグループでも、リガーを使わなくなってしまったんだ。

4th Edition ではヴィークルのルールは改良されていたが、PC のリガーを動かしているグループは少なかった。僕が最初に 5th を手に取った時も、ゲームメカニクスにはあまり期待していなかった。マトリックスのルールを読み終わって、ほんとうに久しぶりにデッカーを作りたい気分になってきたあたりで、ヴィークルのルールに読み進んだ。そこで、リガーとデッカー相互の関係の大きさに、僕は恋に落ちたね。これまで僕が運営し、計画してきたゲームのやり方を根本的に変えてしまう重要な変更だった。もうリガー抜きでデッカーを動かすことはできない。敵のデッカーは、味方のリガーにとって恐るべき脅威になるんだ。

これはゲームの枠組み、特に「基本的なパーティ構成」に大きな変化を促す。D&D、特に初期のものを思い出してほしい。僕もそうだったように、君たちも仲間たちと D&D をプレイしていただろうけど、そこにはプレイに必要なキャラクターのセットが決まっていたはずだし、そうでないとパーティはうまく機能しなかった。戦士、魔法使い、盗賊、僧侶がいた。必要な役割を他のクラスが代替することもできたけど、この4つのクラスがいるのが理想的な構成だった。シャドウランにはクラス制はないけれども、理想的な構成はあった。3rd Edition では、〈ハードウェア〉技能の高いキャラクターがいれば、デッカーなしでもやっていけた。フェイスも必要だったが、やはり社交技能と魅力値の高いキャラクターがいれば、代用が利いた。僕のグループではたいてい、それはメイジの仕事だった。本当にリガーが必要になる場面はなかったし、そんな時でも実際に必要なのは車の方だった。それに操縦技能も必要なかった。4th Edition でもそこはあんまり変わらなかった。でも、5th Edition では全く話が違ってくる。

それじゃあ、作成点ベースの 3rd Edition の基本構成パーティを見てみよう。

  • ストリート・サムライ(たいていはメタヒューマンで、オークやトロールなど)
  • 交渉担当(たいていはエルフ)
  • 魔法使い(エルフかヒューマン)
  • ワイルドカード(医療担当、ハードウェア担当、ガンマニア、デッカー、アデプトなど)

要するに、サムライと交渉担当と魔法使いは、ガチで定番だ。この3種類がいればたいていのことはこなせる。4番目のキャラクターは利便性を増すための、いると便利という程度の存在で、グループがその目的を達成するためにどうしても必要というほどじゃない。ここでの問題はシンプルだ。つまり、ゲームが決まりきった面白味のないモノになってしまうことと、この4番目のキャラクターを使い続けたプレイヤーの経験がやや地味なものになってしまうということだ。

ところが、5th Edition では、話は違ってくる。もちろんネットワーク接続を切っておくことは可能だけれども、ワイヤレス接続にはとても大きなメリットがあるので、接続を切るわけにはいかない*1。ほとんどのキャラクターはハッキングされることなんか考えもしない。だから、GM のたくらみ通りになってしまう。ランナーは仕事を引き受け、ハッキングを受けてひどい目に遭い、状況はめちゃくちゃになってしまう。装備は狂い、サイバーウェアは機能停止し、コムリンクは煙を吐いて故障する。すべてがダメになる。GM は簡単にそれができるし、そこがポイントだ。そんな訳で、PC のデッカーが必要になる。マジで不可欠だ。それを踏まえて、新しい基本パーティ構成を見てみよう。

  • ストリート・サムライ
  • 交渉担当
  • 魔法使い
  • デッカー

まだかなり型にはまりすぎという気もする。でも、もうちょっと掘り下げてみよう。交渉担当にそれだけをやらせておく必要があるだろうか? 魔法使いだ。召喚が専門なら魅力も高いはずだ。だから魔法使いにフェイス役もやらせよう。魅力値が低いなら、交渉技能を高くすればいい。簡単な話だ。さて、枠が一つ空いた。どうしようか? リガーを入れよう。理由? ノイズのルール*2のおかげでリガーはいつでも現場待機してなきゃならないし、それにドローンの威力はすごいから。何より、リガーがいればミーティングの場所まで歩かなくて済む。

そうすると、基本構成はこんな感じになる:

  • ストリート・サムライ
  • 魔法使い(交渉技能持ち)
  • デッカー(魔法使いの魅力が低ければ、こちらが交渉技能を持ってもいい)
  • リガー

全員に仕事があって、負傷欠員のためのカバー体制も十分だし、自分の出番が終わったからといって、ぼーっとしているメンバーもいない。5th Edition では、ワイルドカードのキャラクターの問題が解決されている。それは、チーム内のシナジーが進み、リガーとデッカーを互いのベストフレンドにしているおかげだ。

Posted by Christopher Corp-Myer at 2:41 PM

*1:訳注:5thのルールでは、ほとんどのサイバーウェアや装備がネットワークとのワイヤレス接続機能を持っている。接続すると大きなボーナスが得られる(たとえばスマートガンなんかも命中修正が大きく違ってくる)が、ハッキングを受けやすくなるという、諸刃の刃のルールになっている

*2:訳注:5thで新しく導入されたルール。大雑把に言うと、マトリックス経由の行動は「物理的に現場から遠くなればなるほど、不利な修正がかかる」というもの