さり海馬

Thoughts walk away, blog stays.

図ってくれた喃

年末年始ぐらいに読んでいたんだけど、紹介していなかったのを思い出したので書いておく。

シグルイ 1 (チャンピオンREDコミックス)

シグルイ 1 (チャンピオンREDコミックス)

現時点では三巻まで出てる。怨念と野心と狂気を切れ味の良い刀で刻んで血で和えたようなマンガ。

面白い。人によってはグロで見てられないという人がいるかも知れないけど、私は支持する。山口貴由の作風と原作の残酷具合が実によくマッチしている*1

あとがきで引用されている『葉隠』の文句、「武士道とは死狂いなり」がマンガのタイトルの原典。


葉隠というと、よく「武士道とは死ぬことと見つけたり」みたいな部分をビジネス書とかで引用されて、「死ぬ覚悟を決めておけば慌てない」とか、「死ぬ気になれば何でもできる」みたいな説教に使われることが多い。けれども、葉隠の根底に流れているのはそんなチャラいものではないのだった。そんな消毒された高潔さじゃなくて、もっともっと血なまぐさく、怨念に満ちている。

「正気では大事を為すことはできない」という意味。この言葉の意味を考えると薄ら寒くなる。剣術は正気の道理であるから、それに従う限り自分より強い奴には負けてしまう。そうした理屈を考えた時点で、既に遅れをとっているということだ。常軌を逸してこそ、勝つ、という究極のバカ。

こういう奴が自決覚悟の神風攻撃をやったりするのだ。こうした考え方を自分の物とする気持ちには全くなれないのだけれども、妙に惹かれてしまうのは、私が日本人だからだろうか、とか危険な考え方に(笑)。

原作は直木賞作家・南條範夫の「駿河城御前試合」で、是非読んでみたいところなんだけど、アマゾンでは版元在庫切れとある。無念だ喃(のう)。

*1:主人公二人のコントラストが、私には「覚悟のススメ」の散と覚悟の関係とちょっと似て見えてしまうのは多分考えすぎなんだろうな。