「くノ一忍法帖」 読了
ひそかにしみじみと続いている山田風太郎祭り。今回はある意味伝奇の極北と呼んで良い「くノ一忍法帖」にチャレンジだ。
- 作者: 山田風太郎
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/03/12
- メディア: 文庫
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徳川家康が息子秀忠に将軍職を譲り、大御所として駿府城に引いた時代。豊臣家の残党をことごとく討ち果たし、絶滅にまで追い込んだ家康であったが、唯一の心残りは孫娘千姫であった。豊臣家に嫁ぎ、秀頼の正室となっていた彼女は、大阪夏の陣での落城にともない、その身柄を徳川家へと再び引き戻されたのである。
しかし彼女は、すでに豊臣家の人間であった。千姫の侍女としてついてきた女中たちは、ことごとくが真田の手の者であり、恐るべき妖術を身に付けたくノ一であったのだ。さらに徳川家にとって震撼すべきことは、そのくの一どもがことごとく、亡君秀頼の胤を宿していたのだ。
それを知った大御所は、甲賀鍔隠れ衆を呼び寄せた。服部半蔵ですら恐怖する異能を誇る彼らと、信濃忍法を操るくノ一たちとの、人外の戦いが幕を開けた。
ってな感じのお話。一連の「くノ一」ものの原点*1と言える作品である。正直非常にグロい。特にくノ一たちが使う忍術は、結構キツイものが多く、読んでいて眉を潜めたことは一度や二度ではない。このグロさ加減はちょっと説明しにくいので、一度読んでもらうといいと思う。ネタバレになるので忍術そのものについてはここでは書かない。
物語としての面白さは、他作品に比べると残念ながらちょっと劣る気がする。確かに忍術の描写は面白いが、人物造形などがちょっと空疎に思えるのだ。女たちが戦う話としては、他にも「柳生忍法帖」があるが、私としてはそちらのほうが面白いと思う。
以前から友人のRadcliffe氏とも話していたことだが、山田風太郎の忍法は、物語の中の文脈として読む分には問題ないが、ひとたびそこから切り離して、カタログ的に並べてみると、非常に馬鹿げた感じのするものが多い。この「くノ一忍法帖」に出てくる忍術には、その傾向が特に強いのだ。そうした面もあって、ちょっと引き気味に読んでしまったきらいはある。