さり海馬

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ローマ鍋の謎(2008/4/16追記)

前回のエントリで書いた、「ローマントップフ?(ローマ鍋)」のことがずっと気になっていて仕方がありません。こういう「自分が知らないことで、かつ、ちょっと調べれば分かりそうな、割とどうでも良さげな*1こと」っていうのがずっと気になる性分です。「勝ち目のありそうな戦い」っていうか(笑)。

で、調べてみました。

ローマの鍋とは?→違うところにたどり着く

まず、google先生に質問(google:ローマ 鍋)すると、ヘンケルスに「ローマ」という鍋のシリーズがあるのがすぐに分かります。

Henckels ローマ 両手鍋 20cm 40363-200

Henckels ローマ 両手鍋 20cm 40363-200

ただこれ、単にそういうシリーズの名前というだけらしく、ヘンケルスのサイトで見ると、似た様な形状で「ミラノ」っていうシリーズもあるので、あまり関係ない。

さらに検索結果をたぐっていくとこういうズバリなブログ記事が。


Roemertopf、訳せば「ローマ鍋」になるだろうか。ドイツ製のオーブン料理用の素焼き鍋。古代ローマ人が使っていたんでしょうかね。ここんところずっと使わずじまいで棚の飾りと化していた。

綴りが分かる上に写真まで載っていてありがたい…あれ? これは陶器製のキャセロールじゃないか。これ、映画「魔女の宅急便」でおばあちゃんが孫のために魚のパイを焼いてくれるアレだよね。

続けて roemertopf で画像検索する。

…どれもこれも陶器のものばかりだ。どうやら Roemertopf と言えば陶器が当然らしい。

つまり、レーメートップフとダッチオーブンは別物。

ダッチオーブンの由来

これはズバリのサイトを見つけました。日本のダッチオーブン屋さんが書いているブログ。


娘が、今年イギリスへ短期留学した折り、ホームステイした校長先生宅で、親の仕事を説明した時に「ダッチオーブン」が理解されなかった。そこで「ビーン・ポット」と言ってみたら、あぁ、と判ってもらえたそうである。ヨーロッパで生まれ、移民によって米国に伝わって広まったダッチオーブンは、オランダ(ダッチマン)商人が売り歩いた鍋だから「ダッチオーブン」と呼ばれたと伝わり、私もそう信じて疑わなかった。ところが、あるとき「ダッチオーブン屋」なのにオランダの事を何も知らない事に気が付いた。

オランダで思い当たる事と言えば、「夜警」でも有名なレンブラント、風車、チューリップ、ドンキホーテ。殆ど「芸者、フジヤマ」状態である。そこでダッチで検索を試みると「ダッチ・ワイフ」が出て来た。読者先輩諸兄には「南極1号」でお馴染みのアレである。では何故アレが「ダッチ・ワイフ」なのか。米国ニューイングランド地域はイギリスの植民地になる以前はオランダが支配しており、ニューアムステルダムと呼ばれていた。DUTCHはオランダやオランダ人を意味するが、英語では蔑称を含んでいるそうだ。さらに「質が悪い」という意味も含んでいた。つまり「ダッチ・ワイフ」は戦後も商売敵になった「オランダの抱き枕」に対しての「悪口」であったようだ。 するとどうだろう。豆のようなツルンとした姿から「ビーン・ポット」と呼ばれて大切にされた「ダッチ・オーブン」は、「質の悪い鍋」という意味を込めた蔑称で、そう呼ばれていたのではなかったのか。あなたはどう思います・・・?

あとも一つ。


ダッチオーブンアメリカLODGE社の製品です。

同社は1896年創業のアメリカを代表する鉄製鋳物調理器具メーカーです。

ダッチオーブンの歴史は古く、アメリカ西部開拓時代に旅の生活の中で培われてきたものだと言われています。

一説には、当時、オランダ人の行商人がアメリカに持ち込んだのがその名前の由来だとか。

(3/16追記)
さらに、コメント欄でびじう氏からの情報提供がありました。ありがとうございます。-ウィキペディアの英語版にこれに関連した記述があるとのこと。以下は拙訳しての引用です。原文はリンク先でどうぞ


17世紀後期、調理器具の鋳造技術ではイギリスよりもオランダの方が進んでいた。オランダでは乾いた砂を使って鋳型を作ることで、鍋の表面をより滑らかなものにすることができていた。このため、オランダで製造された金属製の調理器具がイギリスに輸入されていた。1704年、エイブラハム・ダービーという英国人男性が、こうした調理器具を作るべく、オランダに渡ってこのオランダ式鋳造技術を学ぶことにした。その四年後にイギリスに戻ったダービーは、オランダのものと類似の鋳造方法の特許を取り、英国国内および新しい植民地であるアメリカ大陸向けにこの調理器具を製造し始めた。

ダービーの特許はオランダの鋳造方式をベースとした研究の成果であり、それが理由でこの調理器具が「ダッチ」と呼ばれていると考えることができる。別の研究者の説では、オランダ人の行商人が荷馬車にこの商品を載せて各地を巡回しては売っていたことがその理由であるとされている。あるいはこの二つの説は両方とも正しいかもしれない。いずれにせよ、「ダッチ・オーブン」という単語は、300年もの間存在し続けてきたのである。

現時点での結論(2008/5/16加筆)


以上、三つをまとめると

  • ダッチオーブンの由来は不明。鍋そのものはヨーロッパ(どこかは不明)で最初に作られて、そこから開拓時代のアメリカに持ち込まれて広まったという説がある。
  • ダッチと呼ばれている訳は、(1)オランダ人の商人が持ち込んだから、(2)dutch=粗悪品という意味の別称から、(3) オランダの鋳造技術を使ったものだから、の三つの説がある
  • イギリスでは bean pot と呼ぶ*2
  • アメリカでは dutch oven と呼ぶ。
  • オランダでは dutch oven とは呼ばれていない。roemer topf と呼ばれていると私は聞いたが、これは主に陶器製のキャセロールのことを指すので、ひょっとするとその人の勘違いかも。

という結論に。あと、

  • オランダ人に向かって dutch oven という言い方をするのは、相手が気を悪くする可能性が否定できないので、避けるのが賢明かも

あたりの心遣いが必要か。

*1:ここ重要!

*2:ここがちょっと奇妙なところ。wikipedia-enにあった(3)の説を採用するのなら、イギリスで dutch oven という単語が通じない理由を説明する必要が出てくる。可能性としては、(a) この説は誤り、(b) もともとは通じていたが、何かの理由で廃れた、の二つがありそう