さり海馬

Thoughts walk away, blog stays.

枯れた技術を組み合わせるということ

「枯れた技術」という表現がある。字面からは「陳腐化して役に立たなくなった技術」というネガティブな意味に取る人もいるかも知れない。しかし、技術者が使うとき、この言葉は「目新しさは無いけれども、これまでの実用化の過程によって研鑚され、安定化した不安のない技術」という意味に使うことも多い。

先端技術は見目麗しく格好いい。しかし、枯れた技術には、その確実性に裏打ちされた渋い実力の美しさがある。


ハイブリッド型不整地移動ロボ「チャリべえ」(Chari-Be)は、ロボットを長年研究してきた研究者による「シンプル・イズ・ザ・ベスト」なマシンなのである。16日に行われた公開デモンストレーションを見たら、そう感じたのだ。

ロボといえば、大抵は先端技術が売りである。しかしこのチャリべえは、枯れた技術の持つ美しさがある(もちろん原理が枯れているのであって、やっていることは最先端だが)。

なんせこのロボ、歩行するくせに視覚も、足裏センサーすら使っていない。


そして、最後の特徴は、視覚とか足裏とかいうような外界センサーを使っていないこと。ロボットが感じるのは、自分が脚をどれだけ曲げているかという情報(モーターに内蔵されたロータリーエンコーダーによる)と、自分の体がどれだけ傾いているかという情報(ジャイロと傾斜計による)だけである。

つまり、不整地を歩くときには、「脚をとにかくのばしてみて、どっかにぶつかったら、ああここに地面があるんだなと思う」というわけだ。めちゃくちゃプリミティブでシンプルな方法である。

こういうシンプルな技術は、美しいと思うのだ。ASIMOとは別の意味で、やはり感動する。