スキルワイヤと非正規労働者
…もしくは「Unwiredがあんまり未来な感じがしない件」かな。
シャドウランにはスキルソフトというものがあります。これはその人が本来持っていない技能を後付で与えてくれるサイバーウェアです。たいした改造は必要なく、チップを差し込むだけでその時々に応じて技能を使えるようになるので、とても便利な代物です。
この時代(2050年代)になると、このチップのおかげでまず「単純労働」とか「非熟練労働者」というものがほぼ根絶されます。単純労働はロボットやドローンのオートパイロットで代替されてしまいますし、人間の判断力が必要な場所でも、必要な技能はチップを差し込むだけで手に入るからです。企業側は時間と手間がかかる従業員の「教育」というものをしなくなり、単にチップを与えるだけでいいことになります。
しかしこのチップはあくまで技能を「使えるようにする」だけのものなので、チップを外されるとその技能は使えなくなってしまいます。言うまでもなくこうしたチップは会社が労働者に貸し与えているものなので、会社を辞めるとなったらチップは取り上げられてしまいます。
そのため一部の低技能労働者の「職歴」というものにほとんど意味がなくなり、自分の職歴を通して技能を身につけることができないため、非常に価値の低いものになっています。
そしてさらに Unwired の時代になると、このチップすら必要なくなります。
Unwired: A Shadowrun Core Rulebook (Shadowrun (Catalyst Hardcover))
- 作者: Catalyst Game Labs
- 出版社/メーカー: Catalyst Game Labs
- 発売日: 2008/10/08
- メディア: ハードカバー
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世界中に張り巡らされた高速ワイアレスネットワークのおかげで、このようなスキルソフトは必要に応じて「ダウンロード」できるようになっているのです。また、ネットワーク経由でスキルソフトを共有することが出来るようになっているので、「時間貸し」でスキルソフトを提供するプロバイダが多数存在しています。
つまり、雇用側にとって上に上げたような人材は「カセット抜きのファミコン」や「App入れる前のiPhone」程度のものでしかなく、安価に手に入れてどんどん使い捨てるべきものでしかありません。
シャドウランは現在の社会問題(人種差別、多国籍企業、環境汚染、文化の衝突、新興宗教、ボーダレス世界)のカリカチュアを取り込んでゲームの設定としているところが魅力の一つなわけですが、さらになんだかこういう労働の不均衡に関する問題まで取り込んでるんですね。
うーん、面白いなぁ(…というかだんだんシャレになってないなぁ、という気持ちもしてきましたが)。
まとまらないまま終わり。
おまけ:2070年代に求められる人材とは
いちおう2070年代に求められる人材についても書いておきます。
この時代に求められるのは「高い技能を持つ」人物ではありません。なぜならそうした技能は文字通り「カネで買える」からです。
求められているのは「枠の外から物事を考えられる」人材*1です。つまり、他人とは異なったユニークな観点を持ち合わせている人。多くの人から「その発想はなかった」とか言われちゃう人々なんですね。こういう「思考のOS」みたいなものはまだスキルソフトには落とせないので、高い価値があるとされています。
……でもこれって、「優れたシャドウランナーの条件」でもありますね。
*1:映画「メン・イン・ブラック」でウィル・スミス演じる主人公がMIBの採用試験を受けたときのアレを思い出しました。