さり海馬

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SR5:たき火を囲みながら:警官を演じる

Fireside Chat: Playing the Police | Running the Shadows の翻訳記事です。原文は←のリンクからどうぞ

この前の記事では、シャドウランでテーマ的遭遇*1をすることの利点について、詳しく書いてみた。そこで今回は、戦闘的遭遇のいろいろについて書いてみよう。まずは警官から始めてみる。シャドウランの世界では警官はほとんどどこにでもいる。少なくとも、街の治安のいい場所ならね。そしてシャドウランナーは彼らを目にしている。怖がって逃げ回っているのでもない限りは。

じゃあ一般的な警官の能力値から見て行こう。

Police Officer: SR5 pg. 383

ESS
4 3 4 3 3 2 3 3 6

手堅い、中庸な感じの能力値だ。〈ピストル〉技能値が4あって、僕が動かす時には〈長銃〉3をつけることにしている。理由は、シアトルを巡回しているパトカーには、運転席と助手席の間にショットガンが一丁、装備されているからだ。僕は、ロングバレル版のデファイアンス T-250 にスマートリンクを付けたものを載せることにしている。ストックの中の弾帯には5発分の予備弾を付けておく。これにアレス・プレデターVを組み合わせれば、ルール上ではすべての警官が危険な存在になれる。

ただ、これでは一人の警官をランナーにとっての脅威とするには足りないし、実際そうなるべきでもない。警官はいつもペアで行動するし、戦闘が長引くほど、警察側の対応は強化されていく。僕は警官との遭遇を、戦闘的なだけでなく、テーマ的にも扱いたいと考えている。だから、警官はプレイヤーがミスをしたときに登場するだけでなく、ストーリーの都合でも登場することがある。

僕がGMをするゲームでの典型的な警官側の対応を説明しとこう。ランナーのチームはとある個人商店に侵入する仕事をすることになった。彼らは建物の裏口に回るが、そこでマグロックの解除テストでグリッチを振ってしまう。クリティカル・グリッチではなかったのでドアは開くが、警報音がしなかったので、チームはそこで仕事を中断すべきだということが分からない。警報装置から、警察ではなく警備会社に報告が上がる。ここではブリンクス・セキュリティ社という事にしておこう。この会社は店内のカメラにアクセスしてチームを発見し、侵入窃盗行為が行われていると警察に通報する。

ここで僕たちは多少数字を細工する必要がある。シアトル市内の警察の対応時間には地区ごとに大きなばらつきがある。ダウンタウンやベルヴューではものの数分だが、タコマやエヴェレットでは5分間程度、レドモンド・バーレン地区では…まぁ、幸運を祈る、という感じだ。警察の対応を考えるなら、こうしたことを頭に入れておくべきだけど、これは絶対に守らなければならないルールという訳ではないし、こういう「見込み時間」をあてにして行動するようなチームには、キツイお灸をすえてやるべきだ。僕は、僕が妥当だと思うよりも行動の遅いチームには、警官を送り込むようにしている。たまたま巡回していたのかもしれないし、先ほど書いたような状況だと、通報に対応してるのかも知れない。

それではさっきの例に戻ろう。チームはのんびりと数分間をかけて店内を漁っている。彼らは通報されているのを知らないし、一晩中かけても大丈夫だと思っているからね。そして最初のパトカーが到着し、ハイビームにしたヘッドライトで店内を照らしながら停車する。警官が運転席のドアを開け、遮蔽を取りながらピストルを構える。店内にチームの何人かがいるのが見えていて、油断はしていない。【プロ意識】3という値と通報の内容から考えて、すでに応援を手配済で、到着までのカウントダウンが始まっている。

即座にチームのストリート・サムライがパトカーのフロント・ガラスに向けてセミオートのバーストを撃ちこみ、他のメンバーは慌てて目的のブツを探し始める。警官は発砲されたことを無線で連絡する。私は、この警官が簡易動作で10コード(緊急事態要請)を発行できると判定する。これによってその地区の全警官が警戒状態になって、対応までの時間が一気に短縮される。ここで思い出してほしいのは、今現場にはたった一人の警官しかいないという事だ。彼には長びく銃撃戦を始めるつもりなどない。

ここでこの警官には判断が求められる。応援がこちらに向かっていることが無線で分かるから、今の彼の仕事は現状の維持になる。【プロ意識】の値が大きな意味を持つのがここだ。警官なら慌てず、一つのユニットとして行動するはずだ。さらに、この地区に警察のドローンがいたなら、この時点で監視のために現場に向かい、もしチームが脱出しようとするなら、それを追跡するだろう。

ゲーム中、ここまでがおよそ1〜2戦闘ターンだ。警官は遮蔽を取ったまま、撃ち返し、そして運転席のわきにあるショットガンを取り出すだろう。仮にチームが最初の数戦闘ターンでこの警官を無力化、もしくは殺すことが出来たとしても、応援がやってくることは覚悟しているはずだ。

この高まる緊迫感はとてもいい。前にも書いた通り、一人の警官は決して大きな脅威ではないが、5〜6組の警官が空中からのドローンの支援を受けながらやってきたら、これは重大な脅威だし、ベテランのランナー・チームに対しても短時間で対処できるだろう。

チームは最初の警官を殺していたと仮定しよう。そして愚かにも、目的を達成するために店の中に留まっていたとする。1分間(20戦闘ターン)としない内に、複数のパトカーが到着し、裏通りも店の正面も車体で封鎖して、警官たちはパトカーを遮蔽に使う。ここでもしチームが戦いを続けたなら、僕はドローンとルテナント、それに警察のデッカーとリガー、その他ふさわしいと思われるあらゆるものを投入する。これはつまり、そのランは失敗に終わるということだ。

どうすればこうならずに済むだろうか? ここからGMが学ぶべき教訓とは? 簡単に言うなら、プレイヤーたちに自分のミスの責任を取らせることを躊躇うな、ということだ。警察はキャラクターの命を奪うことができ、効率的に行動し、危険な存在であるべきだ。彼らはプロなのだということを忘れてはならない。モールのレンタル警備員とは違う。シャドウランでは、特にゲームの初期においては、警官はGMにとって最高の武器になる。

それと、判断を誤ったチームに経済的な意味で責任を取らせることを恐れないように。犯罪組織にいるのでもない限り、警官殺しは誰からも疎まれるし、警察からも目の敵にされるものだ。依頼人が彼を雇うのを断ってもいい。あるいは、雇ってくれる人がいたとしても、シケた仕事ばかりになるとしてもいい。

僕はいつも、警察は執念深い、ということをプレイヤーたちに思い知らせることにしている。彼らが銃に頼って物事を解決しようとする限り、いつかは大量に残された鑑識情報と弾痕とによって追いつめられることになる。

何か警察にまつわる面白い話があったら、コメントで教えてほしい。

*1:戦闘にならない遭遇