さり海馬

Thoughts walk away, blog stays.

「キリスト教暗黒の裏面史」 読了


数年前、私は知人にあぜんとさせられたことがあった。その人はこう言ったのだ。キリスト教会は西洋文明に素晴らしい影響を与えてきたし、人々に安らぎと思いやりの心をもたらしてきた、と。

基本的には、キリスト教会が行ってきたさまざまな悪事を綴った本。黒歴史と言ってもいいだろう。「キリスト教会は自ら掲げる教義と理念に恥じない歴史を歩んできた、という世間一般の誤解をときたかった」と作者が語っているとおり。

「十字軍遠征、魔女裁判や宗教裁判など、ある程度有名な事象はあった。しかしそれは、特定の時代に起きたヒステリーであり、それ以外は割と平穏だったのではないか」という根拠のない印象は、見事に破壊される。

個人的には、宗教改革の推進者として名高いルターの印象が、学校の世界史の時間に教わったこととずいぶん違っているのに驚いた。歴史の授業が大嫌いでサボりまくり、大学入試のときも地理と倫社を選択したぐらいだから、私が無知なせいなのだろうが。本書によればルターは:

  • 性、階級、人種、信教の違いは、その者の優劣に起因すると考えていた。「大抵の女児は男児よりも早く歩いたりしゃべったりするが、それは雑草の方が生長が速いのと同じだ」
  • ユダヤ人は奴隷にするか追放するべきだ。シナゴーグやゲットーは焼き払ってしまえ

うーん、本当なのか。…序文を書いているのが井沢元彦なのがちょっと気になる(^^;)。とりあえず多少の割引を入れた上で読んだほうがいいか。でも面白いぞ。

あとね、「ヘルシング」とかのネタ本として使えると思うよ、平野耕太先生。

キリスト教暗黒の裏面史 (徳間文庫)

p.s.
この本の惹句に「欧米キリスト教世界の悪魔性をアラブ側から抉り出した」って書いてあるけど、別にアラブ側から見てないと思う。

p.s.2
この本のタイトルは「キリスト教暗黒の裏面史」の方がいいかも知れない。確かに後の方では教会の話では無くなってきたりするけど、この本では主にキリスト教そのものにではなく、それを運用する教会の方へ非難が向けられているように感じる。