ワイアレス世界におけるSINとIDについてのメモ
いきなり間口の狭い話で恐縮だが、現在 Unwired を読んでいて、そこでちょっと混乱しやすい情報を得たので、整理する代わりにメモして残しておくことにする。
Unwired: A Shadowrun Core Rulebook (Shadowrun (Catalyst Hardcover))
- 作者: Catalyst Game Labs
- 出版社/メーカー: Catalyst Game Labs
- 発売日: 2008/10/08
- メディア: ハードカバー
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まずは原則論
2070年代のワイアレス世界で人が生きていくために必要なもの。
- コムリンク: ワイアレス・ノードに接続するために最低限必要な機材。無線で近くのノードと接続する。後述するIDとSINを格納している。
- SIN:"Security Identity Number" 保安識別番号。人物を一意に特定できる。市民であれば誕生や国籍取得の時点で発行される。誕生日、誕生地の他、指紋、網膜パターンなどの生体認証用情報を符号化した文字列。これがない者は市民ではなく、当然「存在しない」ことになる。その人物の国籍や所属企業によって発行され、共通部分以外の中身は発行者によって微妙に異なる。世界的な登録機構(グローバルSINレジストリ)が存在しており、各地に分散した複数のバックアップがあって、それらの整合性が定期的に確認されている。このため、整合性のある偽造は一般のランナーにはきわめて困難(だが、それなりのリソースを持つ犯罪集団などなら不可能ではない)
- ID:そのマトリックスユーザーをマトリックス上で一意に特定する文字列。これも国や企業が発行する。そのユーザーの本名、年齢、メタタイプ、肉体的特徴、現在の写真、所有する免許証、覚醒者登録情報、サイバー・バイオウェア所持登録リストなどが符号化され、格納されている。発行元はやはり国や企業。SINほどではないにせよ、偽造は困難。
中でもSINとIDは混乱しやすいので、表にしてみる。
名前 | 発行者 | 主な内容 | 意味と用途 | (敢えて)喩えると |
---|---|---|---|---|
SIN | 国や大企業 | 誕生日、誕生地、各種生体認証情報 | 個人を一意に特定する。市民であることの証明、生体認証のキー情報、銀行口座開設に必要 | パスポート?*2+生体認証情報 |
ID | 国、企業、各組織 | 名前、年齢、メタタイプ、肉体的特徴、写真、免許証・許可証のリスト | マトリックス・ユーザーを一意に特定する。他のノードとの接続に用いる | 規模の大きなOpenID*3+各種免許証 |
SINがない人間は「社会的に存在しない」ものとされる。つまり基本的な権利が保障されない*4。
IDがない人間は「ワイアレス・ネットワーク上に存在しない」ものになる。2070年代には、ありとあらゆるインタラクションがワイアレス化されている。このため、普通の店で物を買うときにも、バスや電車に乗るときにも、アパートの部屋の出入りにすら(鍵の開け閉めに)IDが必要だ。つまりIDのない人間は買物も出来ないし、乗り物にも乗れないし、部屋の出入りも満足に出来ない*5。
SINがあってIDがないという人間は存在するだろう。例えばクエーカー教徒のように、正当な市民ではあってもテクノロジーを拒否しているような人々がそれだ。そうした不便さを受け入れることができるなら、特段問題にはならない。
SINはないがIDがあるという人間は存在しえない。なぜなら、IDをもらうにはSINを持っていなければならないからだ。
公共の場所では、SINとIDをブロードキャストしていることが必要であるとされている。一般市民はこれに従っているし、治安レベルの良いところでは、常にドローンや警官が巡回していて、これを守らない人に警告や処罰を与える。つまり、普通の人は上に挙げたような情報を互いに晒しながら街を歩いていることになる。プライバシーの価値は今よりもかなり割引されているようだ*6。
そして応用編
シャドウランナーの多くはSINレスだが、実際にはそういう奴らもワイアレス・ネットワークを利用している*7。
実はこういう連中にもSINやIDがある。
そういう奴らの使うSINは偽造だったり、他人のSINを奪って成りすましていたりする。SINは定期的に整合確認が行われるので、齟齬があることが分かるとその時点でそのSINは使えなくなってしまう。偽造SINのバレにくさは、それを生成する業者の腕と手間次第で、キャラクターにとっては「金をかけるほど安全性が高まる」ものと思っていい。
IDにも偽造や盗用がある。それ以外にも、「あまり細かいことを尋ねないでIDを発行する闇業者」というのもあるし、クラッシュが起こる前にマトリックスに組み込まれた古いコードの脆弱性に付け込んでIDを作ったり、古いIDをサルベージして使う奴らというのもいる。不正なIDのバレ難さも、やはり業者に払った金額で決まると思っていいだろう。
ランナーはたいてい複数のIDを持っていて、追跡を避けるために一定期間ごとに使い捨てにするのが普通だ。